暦注のなかには、一粒万倍日や大安ほど知られていなくても、昔から暦に記されてきたものがあります。八専(はっせん)、十方暮(じっぽうぐれ)、天一天上(てんいちてんじょう)もそのひとつで、いずれも「選日(せんじつ)」と呼ばれる種類の暦注です。
これらは一粒万倍日ほど広く知られていないため、どのように決まるのか、どんな意味があるとされているのか、迷われる方も多いかもしれません。この記事では、八専・十方暮・天一天上それぞれの基本的な決まり方と、伝統的にどのような考え方があったのかをご紹介します。
選日(せんじつ)とは何か
選日は、暦に記される吉凶の注記である「暦注(れきちゅう)」の一種です。六曜や十二直(中段)、暦注下段とは別のグループとして分類されています。
選日にはさまざまな種類があり、代表的なものとして一粒万倍日、不成就日、三隣亡、八専、十方暮、天一天上などが挙げられます。それぞれ異なる由来や決まり方を持ち、日常生活のなかで何かを始めたり避けたりする目安として考えられてきました。
選日という名称は、「日を選ぶための暦注」という意味から来ているとされます。ただし、どれが選日に分類されるかは暦によって若干の違いがあり、統一された基準があるわけではありません。
八専(はっせん)とは
八専の決まり方
八専は、十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)の組み合わせである干支(かんし)にもとづいて決まる選日です。
十干は「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の10種類、十二支は「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」の12種類で、これらを順に組み合わせると60通りの干支ができます。このなかで、十干と十二支の五行(木・火・土・金・水)が同じものを「干支相同日(かんしそうどうび)」と呼びます。
具体的には、甲寅(きのえとら)、乙卯(きのとう)、丙午(ひのえうま)、丁巳(ひのとみ)、戊辰(つちのえたつ)、戊戌(つちのえいぬ)、己丑(つちのとうし)、己未(つちのとひつじ)、庚申(かのえさる)、辛酉(かのととり)、壬子(みずのえね)、癸亥(みずのとい)の12日が該当します。
八専は、壬子(みずのえね)の日から始まり、癸亥(みずのとい)の日で終わる連続した12日間の期間を指します。このなかには干支相同日が8日含まれるため、「八専」と呼ばれるようになったとされます。
この期間は60日に一度巡ってくるため、1年に6回程度訪れます。
八専の一般的な意味
八専の期間中、特に干支相同日は、五行の気が偏って不調和になるという考え方があったとされます。そのため、昔は何かを始めたり、大きな行事を行ったりすることを避ける傾向があったといわれています。
ただし、八専の12日間のうち干支相同日ではない4日間は間日(まび)と呼ばれ、八専の影響を受けないとされました。間日は、癸丑(みずのとうし)、丙辰(ひのえたつ)、戊午(つちのえうま)、壬戌(みずのえいぬ)の4日です。
現代では、八専を意識して日取りを決める習慣はあまり一般的ではありませんが、昔の暦には記されていた選日のひとつとして、知識として知っておくとよいでしょう。
十方暮(じっぽうぐれ)とは
十方暮の決まり方
十方暮も、干支の組み合わせにもとづいて決まる選日です。甲申(きのえさる)の日から始まり、癸巳(みずのとみ)の日で終わる連続した10日間の期間を指します。
十方暮は60日に一度巡ってくるため、八専と同じく1年に6回程度訪れます。
「十方暮」という名前は、十方(あらゆる方角)の気が塞がって通じなくなるという意味とされ、この期間は何かを進めにくいという考え方があったようです。期間中の10日間の多くは、十干と十二支の五行が互いに打ち消し合う(相剋の)組み合わせになっています。
十方暮の一般的な意味
十方暮の期間は、十干が一巡することから、天地の気が塞がれ、新しいことを始めるには向かないとされてきました。旅行や引越し、開業、婚礼など、新たなスタートを切ることを避ける目安とされることがあったようです。
ただし、期間中の吉凶の扱いは暦や流派によって違いがあります。
現代では、十方暮を日常的に意識する方は少なくなっていますが、昔の人々が暦を見て日々の予定を立てていたときには、このような期間も参考にされていたという歴史があります。
天一天上(てんいちてんじょう)とは
天一天上の決まり方
天一天上は、「天一神(てんいちじん)」という方位の神様に関連する選日です。
天一神は、陰陽道(おんみょうどう)で重んじられた神様のひとつで、日の干支に従って八方位を巡っているとされました。天一神のいる方位は「天一方(てんいちかた)」と呼ばれ、その方角への移動や旅行は避けるべきとされていました。
天一神は、癸巳(みずのとみ)の日から戊申(つちのえさる)の日までの16日間、天上に帰るとされます。この期間が「天一天上」と呼ばれる期間で、天一神が地上にいないため、どの方角へ行っても天一神の障りがないと考えられました。
天一神が地上の八方位を巡る44日間と、天上にいる16日間を合わせた60日周期のため、天一天上は1年に6回程度訪れます。
天一天上の一般的な意味
天一天上の期間中は、どの方角へ行っても天一神の障りがないため、旅行や引越しなどの移動が自由にできるとされました。方位の吉凶を気にしなくてよい期間として、昔は重宝されたといわれています。
一方で、天一神が天上にいる間、代わりに「日遊神(にちゆうじん)」という神様が地上に降りてくるという考え方もあったとされます。日遊神は家の中を巡るため、この期間は家の中を清潔に保つことが大切だとされました。
現代では、天一天上を意識して旅行や引越しの日取りを決める方は少なくなっていますが、方位の吉凶を気にされる方にとっては、参考になる暦注のひとつといえます。
八専・十方暮・天一天上の共通点
八専、十方暮、天一天上には、いくつかの共通点があります。
まず、いずれも選日に分類され、六曜や十二直とは別の系統の暦注であるということです。また、干支の組み合わせや陰陽道の考え方にもとづいて決まる点も共通しています。
さらに、いずれも一定の期間(八専は12日間、十方暮は10日間、天一天上は16日間)を指し、1年に複数回訪れる点も似ています。
これらの選日は、現代ではあまり一般的に意識されることは少なくなりましたが、昔の暦には記されていたもので、日々の暮らしのなかで吉凶を判断する目安として活用されていた歴史があります。
選日をどう考えるか
八専、十方暮、天一天上といった選日は、昔から暦に記されてきた伝統的な暦注ですが、その意味や吉凶の捉え方には諸説があり、統一された基準があるわけではありません。
選日を日取りの参考にする場合、まず大切なのは、これらはあくまで「吉凶の目安のひとつ」であって、絶対的なルールではないという点です。効果や結果を保証するものではありませんし、選日を気にしなかったからといって、何か悪いことが起きるということもありません。
日々の暮らしのなかで何かを決めるとき、実際のスケジュールや都合を優先することが大切です。その上で、伝統的な暦注を知識として知り、心の準備や気持ちの整理に役立てるという向き合い方が現実的といえるでしょう。
現代での活用の仕方
現代では、八専や十方暮、天一天上を日常的に意識する方は少なくなっていますが、暦や方位に関心のある方や、伝統的な知識を大切にされる方にとっては、知っておくと役立つ情報です。
例えば、旅行や引越しの日取りを決める際に、一粒万倍日や大安といった一般的な吉日だけでなく、天一天上のような方位に関わる選日も参考にすることで、より多角的に暦を活用できます。
また、八専や十方暮のような、昔は何かを避ける目安とされた期間についても、その由来や考え方を知ることで、「そういう見方もあるのだな」と興味を持つきっかけになるかもしれません。
ただし、選日の吉凶を気にしすぎて、日常生活に支障が出ることは避けたいところです。実際の都合や体調、周囲の人々との予定調整を最優先にし、選日はあくまで補助的な参考情報として扱うのがよいでしょう。
暦注との向き合い方
暦注は、長い歴史のなかで人々の生活に寄り添ってきたものですが、その解釈や意味はさまざまで、どれが正しいという統一された基準はありません。
八専、十方暮、天一天上といった選日についても、どのように捉えるかは個人の考え方や文化的な背景によって異なります。昔ながらの考え方を大切にする方もいれば、現代的な視点で合理的に判断する方もいらっしゃるでしょう。
大切なのは、暦注に振り回されすぎず、自分自身の判断や生活のリズムを第一に考えることです。吉日を選ぶことで気持ちが前向きになるのであれば、それは暦注の良い活用法といえます。一方で、凶日とされる日に何かを行ったとしても、それが必ずしも悪い結果を招くわけではありません。
暦注は、あくまで選択肢のひとつとして捉え、柔軟に向き合うことが大切です。
よくある質問
八専・十方暮・天一天上は六曜や十二直とは違うのですか?
はい、これらは「選日」と呼ばれる種類の暦注で、六曜や十二直(中段)とは別の系統に分類されます。それぞれ異なる由来や決まり方を持っています。
八専や十方暮の期間は何かを避けたほうがよいのでしょうか?
昔は何かを避ける目安とされることがあったとされますが、現代ではそこまで一般的に意識されていません。実際の予定や都合を優先し、暦注はあくまで参考情報として捉えるとよいでしょう。
天一天上の期間は旅行に良いとされるのですか?
天一天上の期間中は、天一神が天上にいるため、方位の障りがないとされ、旅行や移動がしやすいという考え方があります。ただし、必ずしも良い結果を保証するものではありませんので、あくまで参考のひとつとして捉えてください。
八専・十方暮・天一天上の日付はどこで確認できますか?
八専・十方暮・天一天上の日付は、これらを載せた市販の暦などで確認できます。当サイトのカレンダーでは現在、一粒万倍日・天赦日・不成就日などを表示しており、これらの選日は掲載していません。
まとめ
八専、十方暮、天一天上は、いずれも選日と呼ばれる暦注の一種で、昔から暦に記されてきた伝統的な吉凶の目安です。それぞれ干支の組み合わせや陰陽道の考え方にもとづいて決まり、一定の期間を指します。
現代では、これらの選日を日常的に意識する方は少なくなっていますが、暦や方位に関心のある方にとっては、知っておくと役立つ知識といえるでしょう。
大切なのは、暦注を絶対的なルールとして捉えるのではなく、自分自身の判断や生活の都合を第一に考え、柔軟に向き合うことです。選日はあくまで選択肢のひとつとして、気持ちを整えたり、新しいことを始めるきっかけにしたりするために活用してみてください。
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